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11月 25

本日、毎日出版文化賞、自然科学部門をいただいて来ました。本日ご参加いただいた皆様には感謝いたします。
村上春樹さんと山崎豊子さんのスピーチは素晴らしかったです。僕はすっかりあがってしまって、全然うまくしゃべれませんでした。がっかり。とりあえず、自分への戒めに準備した原稿を置いておきます。

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この度は、毎日出版文化賞という大変栄誉のある賞をいただき、ありがとうございます。まず、毎日新聞関係者の皆様、審査員の先生方に心より感謝いたします。また、本書「つながる脳」の出版にあたって、NTT出版の皆様、特に牧野さん、宮野さん、今井さんには大変お世話になりました。改めてこの場で感謝の意を表したいと存じます。

本書は、私が理化学研究所、脳科学総合研究センターで普段行っている研究をできるだけ分かりやすく書き下してみようと言う目的で始めました。脳研究というものは、わたしたちの興味をかき立てる大変面白いものである一方で、とても難しいものです。何と言っても、自分自身について、自分の脳を使って考えなければならないという、自己言及性が脳研究を大変困難なものにしています。その矛盾を解消するために、これまでの脳研究は、脳の持っている個性を剥ぎ取り、できるだけ客観的に観察しようとしてきました。しかし、本当に僕たちが知りたいのは、そんな機械のような脳ではなく、もっと活き活きとした脳だったはずです。それぞれに個性を持ち、つまらない事に悩み、同じようにつまらない事に喜ぶ、そんな脳のしくみを知りたいのです。そのために何が必要かを考え、できるだけ分かりやすい言葉で書いたのが本書です。しかし、内容の質を一般向けに落としたつもりはありません。それでも、一般の読者の方から面白かったと言っていただき、このような賞をいただいたことは、本書で扱った社会神経科学の中に、みなさんが脳科学へ求めている何かがあることを示しているように思います。ここでみなさんにお伺いしますが、科学は何の為に行うのでしょう?僕はつい最近まで自分が科学する事の意味が良く分かりませんでした。そして友達との会話の中で突然気がついたのです、「僕たちは自然が怖いから科学するんだと」。わたしたちは自然が怖いから、怖くないように電気をつけて回るのです。そう考えると、脳科学にヒトが興味を持つのは、自分が、ヒトが怖いからなのかもしれません。その怖さを見つめ、その怖さに立ち向かう事を、現代のわたしたちは忘れがちです。その為に、目の前の問題の本質を見失ってしまうのです。つまり、社会神経科学は、そのヒトの怖さに立ち向かう為の科学なのです。どのような形でこの新しい科学が社会に貢献できるかはまだ分かりません。しかし、この学問がヒトを理解し、ヒトを幸せにする潜在的な力を秘めていると僕は信じています。本書をきっかけとして、この分野に興味をもってくれる人々や、若い、出来れば異分野からの、研究者が増えてくれることを期待しています。ありがとうございました。

“毎日出版文化賞授賞式” に 3 件のコメント

  1. エーサクさんのコメント:

    「つながる脳」を読みました。
    既存の脳に関する書籍に無い切り口で脳について語っておられ、大変面白く読みました。
    次回作を期待しています。

  2. Epimbi Madrigalさんのコメント:

    科学というより学問は乾物だと思います。
    専門の方は干しなまこの色とか艶、作り方
    の巧緻などをお互いに批評します。一方、
    一般の人は干しなまこなんて置物にもなら
    ないと言う人ばかりです。本当は干しなま
    こは高級食材なのですが、水に戻したり、
    料理のレシピを考えたりする人はなぜかい
    ません。学問が役にたつたたないという話
    を世間でするときいつもそんなこと考えま
    す。

  3. BrainHackers - Naotaka Fujiiさんのコメント:

    [...] 以前に毎日出版文化賞をいただいた時に書いたエントリーで、「科学の目的は、自然が怖いから、灯りをつけて回るため」だと書いた。今でもそう思うけど、それを一歩進めると、灯り [...]

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