12月 31

今年一年を振り返ってみると、日本という国のシステムにただ絶望した一年だった。これほどの資産を抱えながら、それを有効に使う事も出来ず、長期的な戦略もないために、将来に対する一時の我慢も堂々と国民に強いる事が出来ないシステムは、僕たちに希望を全く与えてくれない。なので、これからは僕自身も、僕の周りのヒトも、世界中のどこでも生きて行けるようなスキルを身につける以外に生き残る方法はないと思うようになった。

そういう時に僕が出来る事は、僕の身の回りのヒト達が持っている可能性をできるだけ伸ばす環境を作る事ぐらい。だから、今年の春からコーチングのコースを取ってみて、それを実践してみようと思った。コーチングは、会話を通じて相手の中にある答えを自分自身で気づいてもらうことで、各個人のパフォーマンスを引き延ばすというメソッド。そうは言っても、言うのは簡単だけどそんなに簡単じゃない。

実際は、単純に週に30分のミーティングを行うだけだし、その半分は実務的な打ち合わせで終わってしまうのだけれど、それ以外の時間を各自の目的設定とその実現に関して一緒に考えるように心がけた。研究者の仕事は、普通の企業のように4半期毎に成果を設定する事は難しい。なので、コーチングのクラスでの実例なんかはあまり役に立たないし、各自の研究者としての経験値が違うので、それぞれのスキルに合わせて試行錯誤するしかなかった。で、それぞれの研究員が持っている短期的目標とその達成度合いを毎週話し続けてみた結果、どの研究員に関しても、一番見込みが甘いのは論文作成に関してだということがよく分かった。

少し前に、「研究工程のうち、実験部分は2割、解析して図が出来てようやく半分、投稿して8割、リバイスアクセプトで完了っていう話をすると、年期の入ったポスドクですらえっ?って顔する。今まで何やってたんだろう?っていうか実験終わっただけで8割終わった気でいるのが不思議。だから焦らないんだね。」というのをtweetしたら、随分沢山RTされて驚いた。たぶん、「えっ?」って思ったヒトが多かったんだろう。

でも、これは多分本当で、実験部分で2割というのも多い位かもしれない。むしろ本当のところは「実験終了で1割、図が出来て3割、投稿して半分、リバイス出して8割、アクセプトで完了」というのが実際に近い。つまり、実験しただけで満足してるヒトは、いつまでたっても論文が出せないっていうことで、実際に論文が極端に少ないヒトは、実験に取りかかるまでが半分、実験終わって9割程度に思ってるみたいで驚く。焦らないから仕事が遅くて、しかも時代について行けてないから大した論文が出ない。そういうヒトは、PIにもなれないだろうし、当然今どきの世知辛いご時世でのラボの運営なんて無理。大体最新の論文は、普通は数年前の最前線ですよ。そこでモノを考えてたら最前線でなんか戦える訳ないよね。

ただ、これを逆に考えれば、実験そのものが占めるヴォリュームが少ないのだったら、色々な思いつきの実験を手当り次第にやってみればいいいじゃんかという考え方も出来るのだけど、仕事の遅いヒトはどうやらそれが出来ないらしい。半年くらい、ただ論文だけ読んで実験計画立ててたりする。石橋を叩いてばかりで渡らないから、無駄メシばかり食べてる。

限られたリソースでの勝負を目指すなら、とにかく動くしかないという教育を、この国では行って来なかった。もちろん、長期的戦略にもとづく、大きなプロジェクトの有用性は否定しない。でも、もし自分がそういう大きなプロジェクトにアサインされていないのであれば、まず動くしかない。そこにしか活路はないし、知性はそういう場所でこそ必要とされるんだから。

ということで、今年は嫌々ながらみなさんのお尻を叩き続けて、ようやくアクセプトがブックチャプター入れて4本、MIT時代の1本入れたら5本、リバイス中が2本、投稿中が1本、投稿直前が3本、投稿準備中が2本と言った程度。その他にNeurotycho絡みの共同研究が3本位準備中。チームレビューが2年後なので、それまでに大物をなんとかしたい所存。ついでに、今年作ったプレゼンファイルは40本前後ということで、趣味のアウトリーチもまあまあやってます。前半はヒマだったのに後半少し忙しくなってちょっと嬉しい一年でした。個人的な満足度としては、まだ3割程度なので、みなさんにはますます自分のために頑張っていただきたいと思います。僕はそのおこぼれで十分です。

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